碧い鱗

青が好きです。魚の体を覆っている鱗の様に今の私を形成している想いでや出来事をチラチラと散りばめて書こうかと・・・

2021-04-28から1日間の記事一覧

マツリカの時:八

秋も深くなり、師走に向けてなんとなく店も気持ちも慌ただしくなり、それでもなんとか平穏無事な日々を過ごしていたある日、 安田が酉の市に行こうと誘いに来た。 今日は目黒の大鳥神社で酉の市が開かれると言う。酉の市に行って、ついでに横山のお店まで足…

マツリカの時:七

開店当日、お昼前に既にお客が並んでいた。特に宣伝したつもりは無かったが、 長崎帰りの親子の店と言うことと、大工の福松が試食のお焼き(お好み焼きなのだが)を宣伝してくれたのか注文もほとんどがお焼きだった。 イカを炒めて、葱と白菜と紅しょうがを…

マツリカの時:六

出発の日、朝靄はあったが、好天気になりそうな日だった。 おつた、長兵衛、与助夫妻に見送られ朝七時頃寮を出発した。 ここから飯能までは文左衛門の足で二刻ぐらいだそうだが、慣れない私たちがいるので、昼までに着けば上々らしい。 しばらくは山あいの道…

マツリカの時:五

お祭り当日、いつもはのどかな山間の田園風景のこの村も、朝から賑わいを見せていた。 普段こんなに人が居たのかと思うほど往来も多く、文左衛門のところにも来客があったり、与助に指示を出したりで忙しい。 そんな中、文左衛門は私と茉莉花とおふきを座敷…

マツリカの時:四

次の日からは毎日勉強になった。教える文左衛門も大変だが、何しろ覚えなくてはいけないことが多い。 午前中は文左衛門から講義を受け、午後からは座談しながら気になったことを話しあっていく事に決め、講義の題材は文左衛門が決めた。 時間や日にちの数え…

マツリカの時:参

「コケコッコー、コケッコケッ、ケーコッ」 (何そのアラーム、誰のだよ、せっかくのキャンプなのにアラームで起きるのは勿体無い。) 「え、アラーム」と由佳は布団を跳ね上げ、 「夕べは確か、変な話をして、夢だったのかな」と周りを見たが、畳の部屋に床…

マツリカの時:弐

ふきは走っていた。こんなに早く走るのは幾つの時以来だろうと思うくらい一生懸命に走っていた。 早く誰かに知らせなければ。跳ねるように下り道を走っていく。 彼等の事は村長から聞いたことはあった。でも他人事の様に思っていた。 まさか自分が遭遇すると…

マツリカの時:壱

東京オリンピックの誘致も決まり、なんとなく浮かれ出した二0十三年の秋。 東京郊外に住む楠田家では、予定していたキャンプに出掛ける準備で忙しい。 車で二時間ほどの近郊で自然を満喫できるお気に入りのキャンプ場に友人家族と一緒に一泊する予定だ。 「…

マツリカの時:序

山がざわめいた気がした。 立ち止まり耳を澄ましてみたが、鳥たちは特に騒いでいない。 木々の間から空を仰ぎ見ても青空は見えるが、さしずめ天気が変わるようでもなさそうだ。 もう少し奥まで行ってみようと思っていたが、何となく気が削がれた。 アケビは…