碧い鱗

青が好きです。魚の体を覆っている鱗の様に今の私を形成している想いでや出来事をチラチラと散りばめて書こうかと・・・

トンガの海底火山噴火が教えてくれた事

先日のトンガ海底火山噴火の衛星映像を見て、今年買った「私が見た未来 完全版」を思い出しました。

「この映像、あの漫画で言ってた物とイメージ似てない?」

ポコンと湧き上がった画像

その後、遥か日本まで津波が到達した経緯

本を読んだ時は「2025年てすぐじゃん、そんな直ぐに起きる?」なんて半信半疑でしたが、災害などいつ起きるか分りません

作者も準備する事が大事だと書いています

とはいえ、漫画の津波は東京は壊滅

特に書いてはないけれど多数の犠牲者が出るのでは無いかと危惧します。

どれだけ準備すればいいの?

準備しても津波に飲まれたら逃げ場所が無いし

そんな途方もないことを考えたニュースでした。

まぁ、信じるか信じないかはそれぞれなのですが、一応2025年7月5日は山にでも行こうかなー(笑)ちょうど土曜日だし(ちゃんとカレンダーはチェックする私)

 

夢で見た事が起きる

というのは私も経験した事があります

それは私が30歳くらいの時

何度も同じ夢をみました

高い山に二つの赤いマークを付けたミサイルが当たり、近くの水辺の街で被災者が3000人ほど出て、幸いなことに子供の犠牲は無かった

と言うニュースを見る夢です

何度か観たので会社の人に話した事もあります

その後911が起きて、会社の人にあの夢はその暗示だったのでは?と言われました

いわゆる象徴的予知夢では?と言われましたが真偽の程はわかりません

 

もう一つ、この夢は何度か見てそのたびにやり直しする夢です

家族で旅行に行き、あるお土産屋さん兼食堂に行きます

そこで、津波に遭うのです

1回目は津波にあい、2回目は車から降りてお店の階段を上がる時に「ここは夢に出た、津波が来るからあの山に登ろう」と私が言うのです

3回目は車から降りず山に向かおうと言っています

津波は2階の天井まで到達してました

海から20キロはあったと思います

もっとあったかも

二階と言えば5メートルはあるという事でしょうか

 

季節はクーラーが必要な季節、でも私はクーラーがキツいと嫌だと薄手のサラサラの上着を着ています

場所は海から大分離れていますが、扇状地の様な地形で古い街道沿いです

お店は一階がお土産やさん

2階が食堂(茶色壁、黄色で〇〇グリルと見えました)外階段で上がります

駐車場はお店の裏手

そして山には公園か霊園があって海の方を向いている様です

そして、山の名前はびざん

そう夢では言っています

でも徳島には行った事があるので、同じ所に旅行に行く予定は二度と来ないはず

なので、眉山では無く、同じような呼び方をする山かもしれません

この場所が何処なのか何年も探していますがみつかりません、まあ所詮は夢ですからね

象徴的予知夢は捉え方により変わりそうでうまく伝えれないのではと思います

 

ある夢の事

私は海辺の堤防にいて、堤防からは長い階段の先に神社の鳥居が見えてます

海辺は遠浅で、なぜか細い木が一本生えています

そこには緑色の蛇が巻ついていて、細い木が折れるほど大きい蛇だなと私は思います

その木の下には二匹の蛇がいます

一匹は茶色、もう一匹は茶色に赤いマダラがあります

堤防でどこかの女の人が「まだ若いのに可哀想に」と言いました

 

気になったので友人に話してみました

そうしたら「これは貴女に起きる出来事じゃないでしょうか?」と言われました

 

それから直ぐのことです

娘の体調が悪くなり調べた所下腹部に腫瘍が見つかりました、幸い大きさの割には良性で所謂膿腫でしたので、取れば問題ありませんでした

でも、レントゲンを見た時、「ああ、あの細い木に絡んでた蛇と同じ形をしている」と思いました

また、それから数年後、私は薬疹で緊急入院したのですが、全身にマダラ状に蕁麻疹が出ました

マダラ状なのが何故なのか医者も不思議がっていましたが原因は分かりませんでした。

後で、「あれ、あの時のマダラの蛇って私の事かー」と思ったのです

でも、後で思えば、といった感じなので役には立たなかったですね

話をした友人には「せっかく教えてくれているので、きちんと受け取れないとですね」と笑われましたが、そう言われましても

と思います。

 

朝起きて夢を覚えていたら直ぐにメモすれば良いと思ったこともあります

たつきさんの様に夢日記を書こうかと思った事があるのですが、ある人が、夢日記を書き出したら、現実か夢かがわからなくなった

と言っていたので怖くて手を出せません

 

本題に戻ります

今回のトンガの海底火山と同じ様な事がフィリピン海で本当に起きたら日本は無事ではいられません

前例の無い事態で津波の様子もわからないと報道されてました

出来るだけ早くメカニズムが解明され、どのくらいの速度で到達するのか?規模はどのくらいになるのかをシュミレート出来れば準備のしようがあるかもしれません。

今回そう教えてくれたのではと私は思います

今後の研究に期待してます

 

もし、私も又何か気になる夢を何度も見るような事があればお知らせしますね

役に立たないかもですが

 

令和4年の初詣:茨城

あけましておめでとうございます

令和4年の初詣は茨城の大洗磯前神社酒列磯前神社と御岩神社に行きました。

念願の大洗磯前神社でしたが、本日は晴天かつ凪で、イメージした鳥居ではなかったです。

初詣と言うことで、お正月限定の御朱印をいただきました。

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ではご紹介します

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大洗磯前神社のお正月限定御朱印帳です

初日の出の絵柄になっています(1500円、御朱印は別で500円でした)A5サイズのクリアファイルをおまけでいただきました

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干支の土鈴が可愛いのと、旦那が寅年なので記念に購入しました

700円です

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次は酒列磯前神社です

ここは宝くじが当たると言われている神社で、私もしっかりお参りして来ました。

参拝後、金運守りを求めて、亀の像を撫でるそうです

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金運守りはセットも有りますが、どちらかで良いそうです

(亀の写真を撮るのを忘れました)

おみくじも引きました

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干支の虎のおみくじもあったのですが売り切れでした残念

大吉が出ましたが、大吉が良いわけでは無いので、結んで来ました。

境内は木が多く、良い気を受けれた気がします。

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狛犬が可愛かったです

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御朱印はこれまたお正月限定の見開きで虎の絵が良かったです

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見開きの御朱印は二種類

いずれも1000円です

次は御岩神社です

神木の三本杉が良かったです

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神仏習合の神社で、大日如来阿弥陀如来が祀られてます

詳しくはググってね

こちらの御朱印は見開きで800円です

大国主命と、伊弉諾、伊奘冉が描かれて素敵です

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ツラツラとご紹介のみですが、なかなか楽しい日帰りの旅でした。

 

今回はバスツアーで行きました。

私が神社巡りで使うツアーはいつも、「四季の旅」です。

ここのツアーは工場やお土産屋さんには殆ど寄らず、ひたすら神社仏閣をまわります。

神社仏閣の案内チラシも用意してくれて、御朱印の優先もできる時があります。

添乗員も勉強熱心です。

車で出かける時も有りますが、混んでそうな時期や、ちょっと遠い所は寝ていけるバスツアーが楽ですね、お値段もリーズナブルですよ

四季の旅で行った1番遠いのは出雲大社

車中二泊三日の弾丸ツアーですが、お安いのと、帰りは温泉寄ってそのままバスで寝て帰るのが良くて二回も参加しました。

良かったら是非検索してみてくださいね

さて、宝くじが当たるといいなー

当たったらブログで報告しますね!

 

 

糸魚川:朝日ヒスイ海岸オートキャンプ場

富山県にある「ヒスイ海岸」はもしかしたら翡翠が取れるかもという海岸です

砂利浜で、海水浴も出来ますが波が結構強く、ライフジャケットを着ないとあっという間に流されそうです。

お勧めポイントをご紹介しますね

 

1♪前に書いた様にヒスイを取っても大丈夫な海岸です。

糸魚川でヒスイが取れるそうですが、そこでは小石一つとも持ち出す事が出来ません

でも、ここは万が一本物のヒスイに出会えて持って帰る事が出来ます。

勿論そんなに簡単に見つかる訳では有りませんが、童心に帰り、無心に石を拾うなんて何十年ぶり?というくらい夢中になります。

そして、「これ翡翠かなー?綺麗だからワンチャン有り!」とたくさん集めた石が

次の日の朝、冷静になって

「なんじゃこりゃ」ってなる所までがお約束の様です。

この気持ち

現地で是非体験してみてください。

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2♪キャンプ場はとても綺麗です

バンガローはちょっと狭いですが寝具もついていますし、快適です

大きめのケビンは早めに予約が埋まるそうです。

バンガローの前まで車で乗り入れ出来るので便利。

 

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3♪海が綺麗です。

日本海側はどこも綺麗です

夕陽もとても良く誰もいない海岸を独り占め出来ます。

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4♪近くに温泉があります

車で10分位ですが、日本海を眺めながらお風呂に入れます。「たから温泉」は入浴料600円ほどです。

 

注意事項

バンガローの裏は線路になっていて、夜中貨物列車が通る事があります

人によりうるさいと思うかもしれません。

私は気にならなかったですが。

 

本当に波が荒いです

小さいお子さんはちょっと危険かも

でも、ボディボードを持ち込めばきっと楽しいと思います。安全に留意して海遊びしてください。

 

翡翠はまあ取れません

「きつね石」がよく取れます。綺麗なので記念にしても良いですね。

フォッサマグナに持っていけば鑑定して貰えるとか…

大人10人で、ローラー作戦で浜を探しましたが翡翠は一つも取れませんでした。こればかりは運ですので悪しからず。

 

いかがでしょう

参考になったでしょうか?

最後までお読みいただきありがとうございました。

素敵な旅を!

 

 

 

 

寺泊:見附市海の家

新潟県長岡市の寺泊にある「見附市海の家」は藤塚浜を見つけるまでは何度もリピートした宿です。

名前の通り、見附市の市民の為の施設ですが、市外の人も泊まる事が可能です。

お勧めポイントを紹介しますね

 

1♪とにかく安い

市外の人は一泊2500円(当時)

食事は別で申告制

一番高い夕食で1500円、他にも選べます。

朝食は一律600円

お庭でバーベキューが無料で出来ます

椅子やグリルの貸し出しも無料なので

近くの魚のアメ横で海産物を仕入れお昼ご飯はバーベキューを楽しめます。

 

2♪海はプライベートビーチ

海の家から坂を下り道路を渡ればそこは海の砂浜。

ほとんど人が居ません

寺泊の有名な海水浴場も近くにあるので、そちらに出掛けても良いと思いますが

いつもバーベキューしながら目の前の海で遊びます。

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3♪お風呂が良い

四階建ての四階に大浴場があり、海に面して大きな窓がついてます

早めに入り、暮れゆく海を眺めながらゆっくり入れます。夕飯の時間が大体決まっているので、夕陽を見ながら入ったことはありませんが、煌めく波も又よしです。

 

4♪夕陽が綺麗

新潟はどこで見ても兎に角夕陽が綺麗

寺泊からは佐渡に沈む夕陽を見る事が出来ます

夜は浜で花火が出来ます。

ゴミは必ず各自持ち帰りましょう

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★注意する事

見附市海の家は市民の為の施設な為、予約は市民が優先です

予約開始時期が異なります

よって、すでに埋まってる事が多いのですが

とにかく安いのが魅力

以前mixiに書いた事があり、それを見た方から「利用しました!とても良かったです」とお声を頂きました。

家族やグループでリーズナブルにをモットーな方はチャレンジしてみてください。取れたらラッキー!

バーベキューの機材は無料ですが炭と食材は用意して下さいね

食事は食堂で他の宿泊客と一緒になります

合宿の様ですが、騒がなければ大丈夫です。

お酒も飲めます。

料金は数年前の金額ですHPなどでご確認ください。

 

以上、寺泊の見附市海の家のご紹介でした。

 

 

 

藤塚浜海水浴場

我が家は毎年夏は海水浴に行く、というのをもう、20年くらい実施してます。

気にいると同じ場所に何年も通うのが常

ここ数年のお気に入りは「藤塚浜海水浴場」です。

以前は伊豆や千葉に行っていたのですが、311の後新潟を目的地にしました。

新潟も何ヵ所か行ったので、そちらの紹介も後ほど。

先ずはとにかく大好きな「藤塚浜海水浴場」をご紹介。

【お勧めポイント】

1♪新潟県新発田市(しばたし)にあるこの海水浴場は、新潟では珍しく、マリンスポーツができます。

バナナボートとマーブルができ、どちらも一人1500円。関東近郊や沖縄と比べてもリーズナブル!

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2♪海水浴場のほとんどの海の家は民宿も兼ねています。

ほとんどと言っても、5、6軒しかありませんが、団体さんを受け入れているお店もあります。

私が利用しているのは「海の家やまと」

藤塚浜海水浴場の一番端に位置するやまとは、お部屋は3部屋と少ないですが、隣の敷地ではテントを常設しているので、キャンプも出来ます。

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やまとの夕飯はバーベキューです(焼いてくれるので、我々は待ってるだけです)

テラスで夕日を見ながらのバーベキューはとにかく最高!

社長も優しくて、大好きです。

ただ、難点は、料理が多い事。

残すのが勿体ない世代には残すのが辛いです。

でも、聞き入れてくれません。

やまとの料金はお部屋だと、一泊2食付きで、8000円〜

グランピングの方はもう少し高いですので、聞いてみてください。

生牡蠣を予約する事もできます。毎年頼みます

料金は宿にお問い合わせください

又、お部屋料金もシーズンにより異なると思うので宿にお問い合わせください。

 

3♪近くに温泉施設があります。車で3分

「紫雲の郷」は日帰り入浴600円、タオル貸し出し100円、宿に言えば、100円の割引券が貰えます。

いつも、早めに片付けて、温泉行って、夕日にあわせて帰ってきて、バーベキューがルーチンです。

勿論宿にもお風呂もシャワーもあるので、好きな方を選べます。

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4♪アクセスの良さ

東京から関越道、日本海東北自動車道を利用して高速降りたら20分くらい

いつも、夜中に出発し、空いてる関越道を休憩しながらゆっくり行きます。

朝7時から開く、イオン新発田店に寄って、ビーチで飲む飲み物と花火を購入してから行きます。

朝8時過ぎには着いて、タープを設置して一杯!

時間的にはゆっくりしながらで5、6時間かかりますが、伊豆に行っていた頃と変わらないので、我々にとっては良しです。

高速降りてからが平で近いのも良いと思います。

 

5♪とにかく空いてます

砂浜は狭く、遊泳エリアも狭いのが日本海側の特徴ですが、新潟でも他の海水浴場より空いていると思います。なので、周りを気にせずのんびり出来ます。

 

6♪夜は浜で花火

バーベキューの後、暗くなったら浜で花火をします。打ち上げ、噴出、手持ち、線香花火

みんなでワイワイ、年甲斐もなく楽しめます。

近くの港で行われる花火大会に当たれば、右も左も花火が上がっているのが見れます。

後片付けと火傷に注意して楽しみましょ

 

最後に、帰りは朝ごはんを食べたらちょっと観光して早めに帰ります(関越混むからね)

新潟は観光スポットも沢山あり、毎年一ヵ所だけ観光します。

観光スポットについては又書こうと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました♪

 

 

マツリカの時:終

一月二十五日、予定通り店を休みにしたまつりの一行は大蔵、安田と待ち合わせて湯島天神まで出掛けて行った。

この日雨は降っていなかったが前日からの冷え込みで一日曇天が予想された。

昨日から何を着ていくか悩んでいた茉莉花だったが、結局いつもの軽装にする事に決め、カルサンに羽毛の半纏にしていた。

 

由佳も普段は荷物を持たないが、今日は遠出をするので、なんとなく無人の店においておくのも気が引けたため、辰五郎から受け取った山本の手紙や電源を落とした携帯などを一まとめにした袋を斜めに背負って出た。

「お母さんそれも持って行くの」と茉莉花に言われたが、無人なのが怖いと説明すると茉莉花も小さな袋を持った様だ。

あいにく丸山は御用多忙との事で不参加だったが、総勢八名の一行は足取りも軽く一刻あまりで着いた。

高輪から湯島までは東海道をほぼ真っ直ぐだ。

 

神社にはすでに人形を求める人が大勢集まっていた。まだ社務所は開いていないらしい。

梅はまだ三分咲きと言ったところだが、本数が多いため、なんともいえぬ良い香りが神社を包んでいた。

 

「間に合ったね、それにしても凄い人だね。人形買えるかな」と茉莉花は不安顔だ。

「一人ひとつしか買えないそうなので、皆で並びますかね、それともお参りを先にしますかぃ」と辰五郎に聞かれ、人形が買えないと困るとの意見で、天神様には悪いが先に人形を買う列に並んだ。

普段は特にお給金を渡していない由佳だったが、お年玉も兼ねて、夕べ一朱づつ、まつりの皆に渡してあった。

やっとの事で人形を買い、押し出されるように拝殿に詣でた。

「ふう、どんどん人が増えてくるね。手水舎の横に梅林があったけど、ゆっくり見ることも、休む事も出来ないね」

「お嬢さん、それなら、この先の女坂の辺りにも梅の木は沢山植わっているそうですぜ、そっちのほうが空いているはずですよ」と辰五郎が皆を案内してくれた。

茉莉花、おいらと取替えしようよ」と文太に言われ、

「いいよ、替えましょ、替えましょ」と交換した。

おふきはと見ると人形を手にもじもじしている。

「おふきちゃん、取り替えないと厄が落ちないよ、ほら、大蔵さん、ぼーっとしてないでおふきちゃんと交換してあげなよ」と茉莉花に言われ二人はそっと人形を交換した。

「じゃあ大蔵さん、次は俺と交換して」と安田が大蔵の人形を取ろうとしたので、由佳はとっさに

「安田さん、私と交換しましょう」と自分の人形を安田に押し付け、安田の人形を取り上げた。

由佳は茉莉花と目配せを交わし、大蔵とおふきを見た。二人はお互いを意識しながらも周りを見回しながら歩いていた。

「二人が幸せになりますように」と由佳は心の中で祈った。

 

「お、なんだか空がだいぶ怪しくなって来ましたね、こりゃひと雨来るかも知れねぇ」と辰五郎に言われ皆は少し急いで女坂を降りかけた。少し霧も出てきた様だ。

「見てみて、あそこの梅はずいぶん真っ赤だよ」と文太に言われ見ると、梅林の中ほどに他とは色の違う紅梅が一本立っていた。

「本当だ、珍しい木なのかな」と一旦は降りかけた坂を少し戻り、皆で梅に近づいた。

薄く靄がかかった中に赤い花を咲かせた梅の木はことのほか凛として見えた。

 

茉莉花と文太が木に近づいたそのとき、数羽のムクドリがバタバタと空に飛び上がった。

「なんだよ、脅かすなよ」と文太が言いかけたとき、ぐらっと地面が揺れた気がした。

由佳はデジャブを感じ、咄嗟に「茉莉花」と叫んで茉莉花の元へ駆け寄った。

 

「なんだ、地震か」と辺りを見渡した文太が

「え、茉莉花、どこに行ったんだい、女将さんもいねぇ」と叫んだ。

 

その声を聞いた辰五郎と大蔵が急いで駆け寄ってきた。

「辰っつあん、茉莉花と女将さんが、今さっきまでそこにいたのに、消えちまった」と慌てて梅の木の周りを走り回った。

大蔵と辰五郎は頷き会うと、「文太、落ち着きねぇ」と文太の腕を掴んだ。

「何言ってんだよ、これが落ち着いていられるってのかよ、おいらの目の前で女将さんと茉莉花さんが消えちまったんだよ、神隠しにあったに違ぇねぇ」と辰五郎の手を振りほどいた。

「文太、二人は神隠しにあったんじゃ無いのだ」と大蔵に言われ文太は「えっ」と大蔵の顔を見上げた。

「二人はな、時滑りしたんだ」

「なんだよ、その時滑りって」と言い掛けて、文太ははっと気がついた。

以前雛屋にかどわかしにあった時、雛屋が「時渡り」と言っていたのを思い出したのだ。

「それって、時渡りとかいう言葉と一緒かい」と大蔵に聞いた。

首肯した大蔵は時滑りの事を簡単に説明した。

話を聞いた文太は懐から鷽替えの木彫りの人形を出し、

「それじゃ、もう茉莉花には会えないんだ」とつぶやいた。

辰五郎は文太の肩に手をかけ、

「こればかりはどうする事もできねぇんだ」と声を掛けた。

人形を握り締め俯いていた文太は、

「長崎帰りってのは嘘だったんだね。皆でおいらに内緒にしてたんだ」

「すまねぇ」

おふきは「ごめんね文太ちゃん、でも言えなかったんだよ。堪忍してね」とすがりながら泣いた。

「おいらに字を教えてくれるって言ったのに、女将さんはそろばんも教えてくれるって言ったのに」

と震えながら言い、梅の木に向かって「まりか、まりかぁー」と泣きながら何度も叫んだ。

おつたもたまらず文太に駆け寄り、抱きしめながら泣いた。

「無事に元の場所に戻れたらいいね」と安田が梅の木を見上げつぶやいた。

それに応える様にか、先ほど飛び立ったムクドリが、数羽が木に止まり、「ギャー、ギャー」と鳴いた。

 

 

 

 

「由佳さーん、大丈夫ですか」と純ちゃんの声がした。

由佳は茉莉花の顔を見ると、両手で体を触り、「大丈夫、なんとも無い」と確認した。

茉莉花は「大丈夫だよ、それより戻ってきたのかな」と周りを見渡した。

目の前には楓が秋の日差しを受けて鮮やかな赤い色を誇っていた。

「とにかく降りよう」と二人は純ちゃんのいる方へ歩いて行った。

 

「由佳さん、茉莉花もその格好どうしたの」と純ちゃんに驚かれたが、「話は戻ってから」とだけ答えて足早にキャンプ場に戻って行った。

 

「お、お帰り、どうだった、紅葉はあった」といいかけた亮一は二人の様子を見て、

「どうしたのその格好」と目を見張った。

由佳は、「とりあえず缶チューハイ頂戴」と貰い、一気に飲み干した。

「あー、本当に戻って来たんだ」というと、皆を前に茉莉花と由佳が体験した事を話した。

最初は皆黙って聞いていたが、「そんな事あるわけないじゃん」と笑われた。

しかし二人が着ている物はさっきまでの服装とは明らかに違っていて、ダウンのコートに至っては半纏に作り変えられている為、半信半疑だが信じるしか無い。

「それにしてもタイムスリップって、出来すぎじゃね」と亮一は行ったが、

「そうだ、充電器、充電器」と茉莉花は携帯を充電して

「実は、下屋敷で一枚だけ取ったんだ」と携帯を見せてくれた。

そこには怪訝そうな顔をした若様と、髪を島田に結い、着物を着た茉莉花が居た。

「本当だ」と亮一はその写真を見てやっと信じる気になった様だ。

「しかし、同じ場所に戻って来れて良かったよね、もし違う場所や時間だったらこっちは大騒ぎだった」と亮一が心配した。

「うん、それは心配したよ。でも、こうして落ち着いちゃうと何だか夢を見ていた様な気がする」

「でもお母さん、私たちは確かに江戸で四ヶ月近く過ごしたんだよ、だからその四か月分は髪も伸びているし、年も取ったって事じゃない。それって損なのかな。それに、もしも、もっと長く向こう居て戻ったとしたら、うんと年を取ってしまっているって事になるよね。

それじゃまるで本当の浦島太郎だよ。私たちはそうならなくて良かったね」

「うん、そうね。短い期間で良かったのかも」とすぐに戻れて幸運だったと由佳は思った。

 

その夜二人は久しぶりにシャンプーで頭を洗い、みんなとバーベキューをし、遅くまで体験談を話しながら過ごした。

由佳は寝る前に袋の中身を確認した。

向こうから持って来たのは山本の手紙と財布だった。財布には二朱と小銭が入っていた。

「山本さんの住所に届けに行かなきゃね」と茉莉花が覗き込みながら言った。

「そうね、今度川越の資料館にも行ってみたいな」

「そうだね、あの後、川越藩はどうなったのかな」と茉莉花は窓から空を見てつぶやいた。

 

次の日、帰る途中に亮一にお願いして妙見神社を探した。

妙見神社は名前を星宮神社に替えていたが、確かに同じ場所に神社はあった。

「こんなに小さかったっけ」といいながら拝殿に向かうと、昔の面影を残した拝殿があった。

由佳は「無事戻ることが出来ました」とお礼を言いながら参拝し、名栗を後にした。

 

 

「そうか、楠田親子は再滑りしたもようか」と丸山からの報告を聞いていた矩典は立ち上がって障子を開け、庭に出た。

「無事であれば良いがの」とつぶやいたが、振り返って、

「此度は存外短かったの、これで符丁が合えば再滑りする事がはっきりした。渋谷は記録し、丸山はこの件を急ぎ文左衛門に知らせよ」と命じた。

丸山が畏まって下り、渋谷も下がろうとした時に、

「渋谷、白モッコウの手配はどうなっておる」と聞いた。

「はっ、春になれば植えることが可能と聞き及んでおります。苗木は出入りの植木屋にすでに注文してございます」

「そうか、してどこに植えるかだが、渋谷、そのほうどう思う」

「はっ、僭越ながら申し上げますが、私めはこの本丸と喜多院にも植えられるのが良かろうと存じます」

墓所にとな」

「はい、時滑りたちの話を聞きますと、幕末の後、城や屋敷はことごとく召し上げられ、手が入ると聞き及んでおります。しかし神社仏閣は多くがそのまま残されたと聞いております故、墓所にも植えられるのが良かろうと存じます」

「ふむ、しかし余はいずれ養子に出る身。いずこに葬られるかわからぬ。しかし、それはその時考える事に致すか。良い、そのように手配せよ」

と指示し、「もう下がってよい」と命じた。

一人になった矩典は再び庭を眺め、「茉莉花、壮健であれよ」と呟いた。

 

キャンプが終わり家に戻った茉莉花は早速パソコンを開いて、川越藩の事を調べた。

若様がその後どうなったのかを知りたかったのだ。

「ねぇ、ねぇお母さん、来て来て」と呼ばれ由佳は並んでパソコンを覗いた。

「若様って、あの後、藩主になったみたいよ」と教えてくれた。

「本当だ、自分は他藩に婿に行くって言ってたよね」と思いながら読むと、藩主の兄が急逝したため文化十三年に兄の養子となって跡目を継いだとある。

名を斉典に変えた矩典は、藩校を立てたり、飢饉や水害の対策を行ったり、さまざまな取り組みをして「好学の名君」と紹介してあった。特に茉莉花の目を引いたのは、水害の時、身寄りのない子ども達を集め、育てる場所を作ったとあった事だ。

「ちゃんと生かしてくれたんだ」とつぶやいた。

さらに検索すると、斉典の肖像画がヒットした。

「えーこんな顔じゃないけど」と茉莉花は抗議したが、「故」と書いてあったので、無くなった頃の姿だと思われる。

「それじゃ仕方ないか、まぁ確かに面影はあるけどね。しかしずいぶん太ったね」と言いたい放題だが、

「若様は藩主になって勉強したことを何とか実現しようとしたんだね」と感心してもいた。

由佳は「文左衛門さんの事も分かるかな」と検索を促した。

「苗字何だっけ」

「大河原だよ」

「あ、これかな、すこつへいだって、変な名前」

大河原文左衛門は家業の薬屋の傍ら漢詩、批評、風刺、和歌、俳句などの著作を残し、風刺小説家、周滑平として一流の学者などを比喩した「学者必読妙妙奇談」という本を残していた。

「今度読んでみようかな、現代文訳があればだけどね」と由佳は文左衛門との約束を思い出して言った。

若様や文左衛門に出会わなければ由佳たちはどうなっていたのか分からない。

そう思うと、いまさらながらに身震いがした。

 

後日、由佳と茉莉花は山本の住所を尋ねた。山本の家は都内で以外と近くだった。

ちゃんと山本が戻ってきているのかは解らなかったが、家族の人に手紙を渡すだけでもと思ったのだ。

家を探し当て、呼び鈴を押すと、出てきたのはすこし歳をとったが紛れもなく山本本人だった。

一瞬二人を窺うように見ていた山本は、「あっ」と驚きの声を発した。

「山本さんですよね」と問いかける由佳に、

「楠田さんも戻って来れたんですね、いやー二人とも無事で良かった」と涙を浮かべながら言った。

「山本さんこそご無事で何よりです」と由佳は山本の手をとり、お互いの無事を確かめた。

 

「どうぞあがってください」と案内してくれた山本は少し足を引きずっているように見えた。

「ああ、これ、あの時再滑りして同じ場所で同じ時間に戻ったんですよ。そしたらそのまま大怪我をして、次に気がついたら病院のベッドの上でした。その時の後遺症が少し残ってしまったんですが、クライミングには支障ないんで大丈夫ですよ」と例の屈託の無い笑顔を向けた。

「大変でしたね」

「それじゃ、山本さんは二回も大怪我したって事」と茉莉花も驚いたが、当の本人は気にしていないようだ。

その後、お互いのその後を話し、思い出話をして過ごした。そして今度一緒に川越に行くことを約束した。

帰り際に、「本当にお二人に会えて良かったですよ。最近は、あれは怪我をしたときに見ていた夢だったんじゃないか、と思いだして、少し寂しい気がしていたんです。だから同じ経験を共有出来る人が居てくれて良かった」と言われた。

 

川越の喜多院は建立は古く、平安初期とあった。江戸初期に、徳川家康の信頼を得ていた天海僧正が住職をしていた寺で、幕府からの厚い庇護を受け、江戸城から豪華な壁画や墨絵で装飾された「客殿」と呼ばれる家光誕生の間や、三代将軍家光の乳母として知られる春日局が使用していた「書院」と呼ばれる春日局化粧の間などが移築されいる場所でもある。

駿府で没した徳川家康公の遺骸を日光山へ運ぶ途中で法要が行われたことから建設された日本三大東照宮の一つである仙波東照宮も隣接しているとあって、参拝客は後を絶たないという。

山本と待ち合わせをして由佳達が訪れた日は桜の時期も終わり、連休の前とあって、参拝客はそう多くは無かった。

大師堂と呼ばれる本堂の裏手に松平大和守家廟所があり、由佳たちは斉典の墓石を探した。

墓石を見つけ、それぞれ手を合わせて瞑目した。

「若様、報告が遅くなりましたが、無事戻って来る事が出来ましたよ」と山本がつぶやいた。

参拝が終わり、ついでに境内を散策しようと庭園に向かった。

「ねぇ、お母さん、川越藩のお屋敷はもう無いんだよね」と茉莉花に聞かれ、

「うん、玄関あたりしか残っていないみたいだね」と由佳はネットで入手した情報を伝えた。

「そっかぁ」と茉莉花は残念そうだった。

庭園の入り口辺りに差し掛かった時、微かに柔らかな花の匂いがした。

匂いの元を探すと、こんもりと形付けられた蔓性の木に白い花が咲いていた。

「あ、モッコウバラだ」と由佳が花に近寄った。

モッコウバラ?これは白いからシロモッコウというの?」と茉莉花は由佳に聞いた。

「よく知ってるね、モッコウバラは白と黄色があるんだよ、これは白モッコウだね」と答えた。

この白モッコウはいつ誰が植えたのかは定かではないが、茉莉花はきっと若様が植えたんだと思った。

藩主になり、川越を離れることの無かった若様は喜多院が無くなる事は無いと踏んでここに植えたんだと信じたかった。

摘んでいた小さい花をパッと離し、茉莉花は「ふふっ」と笑い由佳を振り返って言った。

「わたしさ、やっぱり進路は日本史にする。江戸時代の事もっと知りたいしさ」と言った。

 

由佳は白モッコウから空へと目を移し、丸山や渋谷、そして安田や大蔵の顔を思い浮かべた。まつりの皆はあのあと無事に幕末を乗り切ったのだろうか、それを知る術は無いが、もしかしたらこの空の下に、おふきや、文太の子孫が居るかもしれない。そう願いたいと思った。

そして、「若様、皆、どうか茉莉花の事を見守ってください」と心の中で念じた。

 

マツリカの時:十二

とうとう江戸で正月を迎えてしまった。

暮れには長屋から引っ越してきた文太を迎え、少々手狭になったまつりだが、何とか無事正月を迎えることが出来た。

晦日まで店を開け、いつもより早仕舞いをしようと思ったが、掛取りに走り回るお店の奉公人や、暮れに少しだけ懐が暖かくなり、土産を持ち帰ろうとした職人らが夕方から増え、思いのほか忙しい思いをし、それでも合間に正月の準備を進め、八時頃には皆揃ってこれまでの苦労を労い夕食兼ささやかな宴を開いた。

辰五郎は元旦は屋敷の方に戻ると言っていたため、除夜の鐘を待って皆で近くの神社に初詣に行くことにした。

 

「おふきちゃん、何をお祈りしたの熱心に祈っていたみたいだけどさ」と茉莉花が冷やかしたように聞くと、

「内緒です。言ったらご利益がなくなっちゃいますから」と頬を赤らめて茉莉花の問いをかわしていた。

「ふーん。大体想像つくけどね。まぁ、上手く行くことを私も祈っているよ」とにやにやしながら言う茉莉花に、

「えぇ、何の事ですか、違いますよ、おっかさんが幸せになりますようにってお祈りしただけです」と慌てた。

「あれ、言ったらご利益なくなるんでしょ」と茉莉花の冷やかしは止まらない。

「もう、茉莉花さんたら。それより茉莉花さんこそ何をお祈りしたんですか」

「そりゃぁさ決まってるよ。来年こそは」と言い掛けて、文太が傍にいるのに気がつき、

「やっぱり私も内緒」とはぐらかした。

 

おふきは茉莉花の願いは元の時代に戻ることだと判っているが、これまた文太の手前、

「案外若様の事だったりして」と茶化した。年頃の二人の会話は姦しい。

「はぁ、何でそこで若様が出てくんの」

茉莉花さんは若様のお気に入りだからですよ」

「あ、そんな事言ったらおふきちゃんだって大蔵さんのお気に入りじゃない」

「そんな事ないです」

 

二人の会話を聞いて

「え、茉莉花さんって若様に輿入れするのかい、おふきちゃんは大蔵さんと所帯もつのかい」と驚いた文太は二人に

「そんな事あるわけないよ。まったく」と叱られた。

 

「おつたさん、七回忌はいつ執り行う予定ですか」と由佳は年明けの予定を聞いてみた。

「へえ、命日が六月ですのでその前にはと思っています」

「そうですか、それじゃぁその時は皆で行きましょうか。名栗は青梅を抜けても行けるでしょ、五月頃なら気候もいいし物見遊山がてらって言うのはどうかな」

「皆さんに来てもらえるなんてありがたいです。でもお店の方はいいんですか」

「まぁ何日って訳でもないだろうし、たまにはいいかなと思ってさ。また近くなったら相談しようね」と由佳は言いながら、それまでに再滑りすることが無ければと心の中で思ったが、口には出さなかった。

 

店は他の店と同じように三日から開けた。

町は新春らしいさわやかな天気が続き、初詣や、初売り出しの帰りの客で賑わった。

まつりも新しく焼きうどんを売り出し、上々の出だしだった。

辰五郎は、山本の件で五日から川越に行くことが決まっているため、その前にと文太に色々仕込んでいた。

「いいか、青菜はいつもぼて振りの新太から買っているが足りない時は八百八までひとっ走り買いにいくんだぞ」

イカは魚河岸から届けて貰っているが、うちは目方で買っているから、届いたら必ず計るんだぜ」

など仕入れについても教えている。

文太は辰五郎について一生懸命覚えようとしていた。年末に父親を亡くし、まつりで暮らす様になってからさらに大人びたようだ。

正月休みの間も茉莉花を捕まえては字を習ったり、由佳からはそろばんを習ったり熱心だった。

元々頭の良い子だと聞いていたが、いつも間にか黄表紙位はほとんど一人で読めるようになっていった。

辰五郎も一緒に三畳間で寝起きしているせいか、自分の子どもの様に叱ったり褒めたりしていた。傍から見ると親子の様だと由佳は思った。

 

その日は今年一番の底冷えのする朝だった。

昨日降った雪は止んでいたが、深い針葉樹の間にも雪が降り積もり、笹が頭を垂れていた。

前日に川越入りしていた辰五郎は、兼ねてより手配していた人足と木材を従えて日和田山の女岩の麓にすでに到着していた。

「旦那、昨日までの雪で足場が滑りやすくなっておりやすが、本当に今日ここに仕掛けを作るんですかい」

和田山で樵をしている吉左が手に息をかけ、手もみをしながら聞いて来た。

「おうよ、こちとらも上の命令で動いているんだ、今日中に仕掛けを作っちまおう。皆たのんだぜ」

「へい」と吉左以下応じ、「気をつけてやるんだぜ、なにしろ滑るからよ」と吉左も声を掛け作業が始まった。

 

まずは、女岩の両端に梯子を立て、周りの木を使い固定していく。

その後、岩の表面に向かって立つ杉を縫うように縄を通していく。

それが済んだ後岩の根元から木々に向かって受けるように網を掛けていく。

網は投網を二重にし丈夫にしてあるものを使う。

 

ちょうど白魚漁のすくい網の大型版の様な形だ。一辺を岩の根元に打ち込んだ杭に縛りつけ、一辺を木々に通し縄を使って固定していく。

女岩の高さは高いところで、十一間、幅は広いところで四十四間もある

(高さ約十から二十メートル、幅七十から八十メートル)

網は何枚かを重ね合わせながら張り巡らされ、女岩の中腹からの落下を受け止められるようにすこし余裕をもって設置された。

 

滑る足場に気を使いながらも吉左以下五名の樵の手伝いで何とか昼八つまでに作業があらかた終わった。

後は試しに岩から飛び降りてみて、強度を確かめるだけだが、辰五郎には試しをする自身が無かった。

辰五郎の家は代々越前松平家に仕えるお庭番だ。技量により、中間の役を承ったりするが、実は本来身分は武士だ。

辰五郎の家も元を正せば甲賀忍者の末裔で、厳しい修行の上、お庭番に抜擢されるのだが、

如何せん徳川も百余年を過ぎ、武士の腰の物も飾りの様になっている時代で、昔の様な気概がある者は少なく、辰五郎もしきたりに則り、そこそこにの修行はしたが、素手で岩によじ登り、そこから落ちるなどの芸当は出来そうに無いと思っていた。

どうしたものかと思っていたら、丸山と山本がやってきた。

「おぉ出来ましたね。思っていたより大掛かりですな」と丸山が感心したように言った。

「これはご苦労様です。皆の手伝いもあって思ったより早くに出来ました。後は試しをするだけでございます」と辰五郎は丸山に報告した。

「そうであろうと思って山本さんをお連れしたのだ。さて、山本さん如何なものであろうか」

網の強度や張り方は調べていた山本は丸山に尋ねられ、

「大丈夫そうです。思ったより丈夫に出来ていますので」と答え、背中の荷物を降ろし、なにやら道具を取り出して腰に袋をつけていた。

 

手伝いの男達も何が始まるのか興味津々で山本の動きを見ていた。

山本は岩の下で体をほぐす様に動いた後、素手で岩に飛びついた。

そうかと思うとするすると両手で岩を登って行く。途中、岩の隙間に鉄の楔をはめ込み、それを足がかりにして又体を持ち上げてあっという間に岩の中腹までたどり着いた。

山本は振り返り「この辺りから行きます」と合図をし、ぱっと手を離し網に向かって落ちてきた。

 

網は杉の木を大きくしならせ。一旦は地面擦れ擦れまで延びたが、ぶつかることも無く、又反動で放り出すことも無く山本を受け止めた。

手伝いの男達に手を借りながら山本は網から起き上がった。

「おめえさん一体何者なんだい、忍びかい」「おったまげたな」と男達は口々に言い、無事を確かめていた。

山本は笑って答えながら「丸山さん上々ですよ」と手を振った。

 

もう一度縄の状態を確かめて貰ってから辰五郎は男達に仕事の終了を告げた。

丸山は懐から財布を出し、それぞれに手間賃を渡した。例を言いながら受け取った男達は早々に山を降りて行った。

 

岩を見上げていた山本がふと振り返り、

「辰五郎さんお願いがあるんですが」と懐から油紙に包まれた物を取り出した。

「これを楠田さんに渡して欲しいのです」

「へぇお安い御用です。手紙ですか」

「はい、私の住所が書いてあります。もし楠田さんが戻ることがあったら是非尋ねて欲しいと伝えてください。その時もし私が居なかったら家の物に渡して貰う手紙も一緒に入れてあります」

「確かにお預かりいたしました」そう言って辰五郎は受け取った包みを懐に仕舞った。

 

「さて、後はその時が来るのを待つばかりですな。今日は冷えているので帰って暖かいものでも腹に入れましょう」

そう丸山に促され、飽きずに岩を見上げていた山本も帰り支度をし、三人は山を降りて行った。

 

川越の手ごろな店に入り熱燗で体を温めた三人は今後の段取りを軽く話し、お開きにした。

山本は始終人懐っこい笑顔で話しをし、ねぐらへと帰って行った。

これで会えるのが最後かも知れないと思い、山本の後姿を辰五郎はいつまでも見送った。

 

次の日、川越の屋敷の長屋を出た辰五郎は名栗に来ていた。

おつたの亭主と息子の墓に詣でる為だ。

二人の墓は墓地のはずれにひっそりとあった。墓石には名前が彫ってあったが、うっかりすると見過ごしそうな位小さな墓だった。

辰五郎は丁寧に掃除をし、線香を手向けて頭を垂れた。

心の中でおつたと所帯を持つことの許しを願い、おつたとおふきを幸せにすると誓った。

ふと人の気配がして辰五郎は振り返った。見るとここの住職と思える人物が見つめていた。

 

辰五郎は立ち上がり会釈をした。住職は会釈を返しながら、

「見慣れぬ人がいらしたので様子を見ておりました。そこはおつたの亭主の墓ですが、知り合いであろうか」と聞いてきた。

「これは失礼をしました。私は川越藩の中間で辰五郎と申します。このたびおつたさんと所帯を持つことになり、御用のついでに元の亭主に許しを得に詣でました」と告げた。

「おお、そうでしたか、それはめでたい事です。それでおつたとおふきは元気でしょうな」

「へぇ、楠田様親子も元気でお過ごしです。こちらへ寄った折には、ご住職様へくれぐれもよろしくと言いつかってきております」

「それは何より、是非江戸での様子を聞かせて貰いたいのですが、如何かな」と庫裏に案内してくれた。

小僧が運んで来てくれたお茶を飲みながら、江戸でのまつりの繁盛振りと皆の様子を当たり障りのない範囲で話して聞かせた。

 

名栗は時滑りについては藩主の命のもと、村が一丸となって保護している場所で、大方の事情は知っているだろうが、辰五郎からは詳しいことは話せない。それで当たり障りの無い範囲になってしまうのは致し方ない。

 

一刻ほど話をし、辰五郎が「それでは私はこれで」と辞去しようとした時、不意に思い出したように、

「この後はお屋敷に戻られるのであろうか」と住職に聞かれた。

「いえ、このまま江戸に戻ろうかと思っております」と伝えると、

「暫しお待ちを」と言って部屋を出て行った。

 

暫くして、「実は蔵を片付けておったら古い文献が出ての、これを若様にお見せしたいと思っておって、遠回りになるが、お屋敷に届けて貰えるであろうか」と古ぼけた書物を渡された。

 

「何代か前の住職が書いた物らしく、ところどころ読みづらいところもあるが、時滑りについて書いてあるようじゃ。時滑りの方々が元の場所に戻るための参考にでもなればと思うての」

そう嘆息した住職に辰五郎は頷くだけにとどめて、「確かに若様にお届けします」と受け取った。

 

山本の一件も辰五郎の口からは話せない。心配する住職の顔を見て少しばかり心が痛んだが、そんなそぶりも見せず書物を懐に入れ、寺を後にした。

 

 日和田山の女岩に仕掛けを作ってから一週間ほどがたったある日。

その日は前日から冷たい雨が降り、時に霙になったりして、睦月の天候にしては不安定な日だった。

前日からの雨で、今日は休みを言い渡されていた山本は朝から空を見上げていた。

和田山の方では厚い雲の中に時折稲妻が見えていた。雪が降る前は稲妻がなったりするが、今日のそれは嵐の前のような様子だった。

 

「よし、行ってみるか」とひとりごちた山本は、長屋の掃除を済ませ、上がりがまちに丸山宛の手紙を置き、小さな荷物だけを持って家をでた。

目的地は勿論仙人岩だ。

時折強くなる雨の中、すげ傘をかぶり黙々と山を目指した。

一刻は過ぎただろうか、山本は横手村諏訪大明神に着いた。

先日下見をしたとき神社があるのを目に留めていた山本は、この神社の由来も知らずにいたが、今回の試みの成功を祈ってお参りしようと考えていたのだ。

 

お参りを済ませた山本は荷物を降ろし、暫し休むことにした。

雨風は川越を出たときより強くなり、雷の音もゴロゴロと山のほうから聞こえて来るようになった。

神社の軒を借りて、持ってきた握り飯で腹ごしらえをしていた山本の前に駆け込んで来た者が居た。

 

「もしかしたら今日あたり来ているのではと思ってな」と塗れた傘を取り、にこりともせず言ったのは渋谷だった。

「これは渋谷様、わざわざありがとうございます」山本は立って頭を下げた。

うむ、と頷き帰した渋谷は拝殿に向かいお参りをした。

渋谷には何度かあった事があったが、いつも寡黙に控えているだけで、特に言葉を交わした事は無かった。

それでもわざわざ来てくれた事に山本は嬉しくなった。

「あの、お屋敷から真っ直ぐ来られたのですか」

「いや、そなたの長屋に寄って、丸山宛の手紙を見つけたので、それを持ってこちらに参った」

「昼飯は食べられましたか、握り飯ならありますがいかがですか」

「うむ、もらおう」

それっきり話すことも無く二人は暫く並んで腰掛け、握り飯を食べた。

 

二人が女岩に着いたのは八つ頃だった。山の中では雨も木々が遮ってくれるが、足場は悪く女岩にたどり着くのに難儀した。

雷は一層音を轟かせ、近くなっている事を教えていた。

山本は仕掛けを点検し、岩に登る準備を始めた。

渋谷は薄暗くなった空を見上げ、黒く重い雲が迫って来ているのを見ていた。

雲は雷をつれてきた様だ。突然稲光がし、辺りを照らした。

「そろそろ真上にきそうだ」と山本がつぶやき、渋谷に一礼した。

頷き返した渋谷に背を向け、山本は岩に飛びついた。雨で滑るであろう岩肌をものともせず山本はするすると岩を登っていく。

渋谷は感嘆の表情でそれを見上げていた。「まるで猿(ましら)だな」とつぶやいた。

 

岩のてっぺんに近く、ちょうど岩が迫り出している辺りに楔を打ち込み、足を架け体制を整えると山本は空を見上げた。

大粒の雨が顔を打つ。

「さぁ来い」と空に向かって吼えた。

それに応える様に突如、稲妻が光った。

それと同時に山本は今まで体を預けていた岩から空に飛び出した。

渋谷は山本が何か叫んだのを聞いたが、突然の稲妻に一瞬目が眩んだ。そしてすぐさまどーんと聞こえた音に思わず身を庇いしゃがみこんだ。

しばらくして顔を上げ、ぐわんぐわんと耳鳴りがしたが渋谷は岩に駆け寄った。

「山本殿、山本殿」と岩や仕掛けや岩の足元を見たが山本の姿は無かった。

雷は岩の向こう側に落ちたのか見上げれば微かに煙が上がっているいるのが見えたが、山本の姿はどこにも無かった。

山本が居た辺りには足を架けていたはずの楔が残されていたが、暗くなった今はそれを確認する事が出来ない。

もう一度岩の回りや仕掛けの辺りを丹念に確認した渋谷は一礼してその場を後にし、「無事もとの場所へ戻れたのだろうか」心配しても詮無いことと思いながら川越に向かって走り出した。

 

翌日は雨が上がり、渋谷の案内の元数名の中間と樵を連れて山本の探索が行われた。

樵たちは山本の事は知らされず、岩の周りの整備とだけ伝えて、草を刈りながら捜索を行った。

岩のてっぺんにも登らせ女岩の上も捜索が行われたが何も見つからなかった。

 

今月も「時の会」の集まりの日になった。一ヶ月が早いなと思いながらも由佳は仕込みの準備に忙しかった。

一月の「時の会」は安田の店で開催されるため、例のごとく、その日のまつりは休みにし、

前日から仕込みを始め由佳は差し入れの料理を拵えた。

今回の料理のメインは、前日から生姜醤油に漬けたシャモの肉に、

山椒と七味をかけ、安田の店で鉄串に刺し炭火で炙って香草焼きにするつもりだ。

それと、もち米の霰をまぶして油で揚げた白身魚のフライ風と定番のシュウマイや肉まんだ。

時間のあるときにこの時代の調味料で作れそうなレシピを綴って来た由佳はほとんどの料理をそのレシピ通りにおつたに作ってもらった。

 

「女将さん、自信ねぇけんど、これでいいんだろか」とおつたは不安そうにしていたが

そこは長年台所を支えてきただけあって、手際も良く、一度味を覚えたら直ぐに再現できる。

最近は自ら提案し、一味加えたり工夫するようになっていた。これで何時でも私たちが居なくなっても大丈夫だ。そう思いながら由佳はおふきとおつた母娘を見た。

 

辰五郎から所帯を持とうと言われてからのおつたは心なしか綺麗になって色っぽくなったと思う。

おふきも町の娘らしくなり、この頃はおつた目当ての若い男の客が増えすっかり看板娘だ。

文太も出会った頃に比べれば背も伸び、力仕事もお使いもすっかり任せられるようになった。

手習いも店の合間を縫いながらではあるが、茉莉花に習い、コツコツとしかし確実に習得している。何もかもが順調に思えた。

辰五郎は偶にお屋敷の仕事で留守にすることがあるが、すっかり煮売り屋の親父の体だ。

藩は、いずれこの店を細作の拠点にするつもりのようだが、どんな風になるのか由佳には想像がつかない。心配事と言えばそのことだ。

おふきやおつたに災難が降りかからないように辰五郎にお願いしているが、まだ決まっていない事が多くてあっしにもわかりません、と頼りない。

今日丸山に会ったらその辺の事も聞いてみようと由佳は思った。

 

「おつたさん、手伝いありがとう。ここはもういいからおふきさんと出掛けていいよ」と声を掛けた。

「へぇ、ありがとうございます。では後はおねげぇします」と前掛けを外した。

「おふきちゃん、今日は何処に行くの」と茉莉花が聞いている。

「今日は神田明神まで行こうと思っているんですよ」とおふきが答えた。

「えー遠いじゃない、大丈夫」

「一刻もあれば着きますよ。向こうでお昼にして、ゆっくり歩きますから大丈夫ですよ」ね、おっ母さんと笑顔を向けた。

「おふきちゃん、無理しないで帰りは籠にして。暗くなったら心配だし」

「はい、遅くなったらそうします。でも暮れ六つには戻るつもりですから、女将さん心配しないでください」

「気をつけてね」と茉莉花の声に見送られ、母娘は出掛けて行った。

 

「文太は今日は辰っつあんと釣りだっけ」と茉莉花が聞いた。

「そうだよ、いいのが釣れたら安田さんの所に届けるって言って張り切って出て行ったけど、どうかな」

最近文太は時間があると釣りに凝っていて、時々晩御飯のおかずになるような魚を釣ってくる。

今日は辰五郎の知り合いの船に乗せて貰って少し沖で釣りをするらく、朝早くにおつたに握り飯を拵えて貰って、二人で張り切って出て行った。

「ふーん、なんか、辰っつあんと文太って益々親子みたいになって来たね」とつぶやいた。

「そうだね、辰さんはおつたさんと所帯を持ったら文太を正式に養子にするつもりみたいよ」

「え、そうなのそれじゃ安心だね。へーそうなんだぁ」と茉莉花は喜んだ。

「まだ文太には言っていないから内緒ね」

「わかった。あーでもその話は私たちが居なくなってからかも知れないんだよね」

「そうだね」

「つまんないなぁ、文太の喜ぶ顔が見たかったのにな。あ、でもそしたら私たちがこのまま帰れなかったらどうなるのその話も無くなっちゃうの」と今度は心配している。

「うーんそれはちょっとわからないなぁ、今日丸山さんに会ったら色々今後の事も聞いてみるよ」

「そうね、山本さんの事も聞かないとだしね」と茉莉花に言われ、由佳はそうだと思い立った。

今日は丸山に聞きたいことが沢山ある。

「山本さんどうしたかなぁ」と茉莉花は頬杖をつきながらつぶやいた。

荷物を詰め終わった由佳はお茶を入れながら、二人だけの店は何だか寂しいと思った。

 

「ごめん」と表の戸が開き、大蔵が入って来た。

「あ、大蔵さんいらっしゃい。今日は早いですね」と茉莉花が出迎えた。

「そうであろうか」と大蔵は何気なく店を見回した。

目ざとく茉莉花が見付け、「今日はもうおふきちゃんは出掛けて居ないよ」と先回りして答えた。顔がニヤついている。

「そうか、いや何、店が広く感じるなと思っただけだ」

「ふーん」とニヤついた顔のままの茉莉花があいまいな返事をする。

「みんな出掛けていて私たち二人なんですよ。私もさっき、そう思ったばっかりですよ」と由佳はお茶を差し出しながら答えた。

 

茉莉花はお茶を飲む大蔵の顔を見ながら何か聞きたそうにしている。

「拙者の顔に何かついているのであろうか」と大蔵は怪訝そうに聞いた。

茉莉花は少し迷ったのち、意を決したような真剣な顔で、大蔵に向き合い言い放った。

「ねぇ、大蔵さんはおふきちゃんと所帯を持つ気、あるの」

お茶を飲んでいた大蔵は突然の茉莉花の問いかけに、思わずお茶を噴出しそうになったが、そこは武士だ、直ぐに気を鎮めて

「何を唐突に、何の話であろうか」と聞き返した。が、かなり動揺しているのか、いつもの大蔵の落ち着いた話し方ではなく、あわてた物言いだった。

「だからさ、大蔵さんはおつたちゃんと所帯を持つ気がありますか、と聞いています」

茉莉花はいたって真剣な顔で聞きなおした。

大蔵は居住まいを正して茉莉花に向き直った。

「何の冗談かは知らんが、我等、時滑りがこの時代で所帯を持ったり子を成す事は藩との約定により禁止されていることを茉莉花どのも知っておろう」と何時もの大蔵に戻って諭すように答えた。

「それはさ、いずれこの時代から元の時代に戻ってしまう時いろいろ厄介だからと作られた約定で、戻れない人の場合、特例が認められるかも知れないって言ったら」と茉莉花は謎めいた言い方をした。

「え、それどういう事」と由佳は思わず口を挟んだ。

「うん、先月の時の会の時、若様と話をしたじゃん、その時の事なんだけど」と茉莉花はその時の話をした。

もし帰れない人の場合はこの時代で生きていくしかないので、特例もありえるとの話だ。

「じゃぁ確実に帰れる見込みの無い人は所帯を持ってもいいんだ」と由佳が茉莉花に念を押した。

「そう、たとえば横山さんや大蔵さんはそれに該当すると思う。先月の話では同じ現象が起きれば戻れる可能性があるけど、裏を返せば同じ現象が起きない人は二度と戻れない訳で、

そういった意味では、残念だけど大蔵さんは二度と元の時代に戻れないって事になるでしょ」

「確かに横山さんは爆弾が落ちてきたって言っていたから今の時代では再現出来ないよね。大蔵さんは鉄砲に撃たれたんだっけ」そういいながら由佳は大蔵の顔を見た。

大蔵は目を閉じて話を聞いていたが、由佳の問いかけにゆっくりと目を開け、

「拙者の場合は、今でも再現出来るのでは無いかと思う」と答えた。

それを聞いた茉莉花は、

「そうかな、今確かに鉄砲は手に入るかも知れないけど、性能も腕も数十年後よりは落ちると思うし、うまいこと顔を掠めて撃つなんて出来ないと思う。それこそ生きるか死ぬかだし、藩が許可しないよ。この先幕末まで戦争は無い訳だから同じ現象を再現するのは不可能に近いと思う」といつに無く雄弁に語った。

それを聞いてしばらく考えた大蔵は「確かにそうかも知れん」とつぶやいた。

「でしょ、そしたらさ、大蔵さんはおつたちゃんと所帯が持てるって事だよ。で、どう」といつもの様に茉莉花が畳み掛けた。

「どうかと言われても、それとこれとは別であって、ましてや相手がおる事であって」と大蔵は狼狽している。

「あーもうじれったいなぁ。大蔵さんはおつたちゃんが好きなんでしょ」と茉莉花にストレートに聞かれ困った大蔵は、

「そういった事は武士は口にせんものだ」とぶっきらぼうに言って横を向いたが、心なしか顔が赤くなっているようだ。

「もう、この時代の人のこういった所が面倒くさいんだよね、特に武士」と茉莉花がちょっと喧嘩腰になったので、

「まぁまぁ、仕方ないよ、特に武家は感情を表に出さないように育つんだから、それにそんなに畳み掛けたら大蔵さんが気の毒だよ。二人の事は二人に任せておくしかないよ」と由佳が見かねて助け舟を出したが、

「だって、そしたら何時までたっても大蔵さんは何も言わないと思うよ。こういう時は男から言わなきゃ。いつもでもほっといたら他の人に攫われちゃうよ。最近のおふきちゃんは人気が高いんだから。先日も大店の若旦那みたいなのが来てさ、愛想を振りまいて帰ったけど、あれは絶対におふきちゃんに気があるね」と大蔵の顔をちらちら見ながら挑発するように話したが、

「大店の若旦那なら申し分ないではないか、そのほうがおふきさんも幸せになろう」と大蔵は我関せずの顔で言いのけた。

「もう、大蔵さんは女心が全くわかって無いんだから、おふきちゃんは絶対大蔵さんが好きなの」と茉莉花はぷりぷりしながらお茶を飲んだ。

「そんな事分からんであろう、それに金持ちに嫁いだほうが良いに決まっておるでは無いか、

拙者の様な貧乏浪人に嫁いだとて苦労するのが目に見えておる」大蔵もいつもより声が大きくなっている。

「はいはい、その位にしてそろそろ出掛けようよ、安田さんが待ってると思うよ」と由佳は二人の掛け合いを止めて荷物を差し出した。

「全く大蔵さんは頑固なんだから」と荷物をひったくるように受け取り茉莉花はさっさと出て行った。

由佳はため息をつきながら、

「大蔵さんごめんなさいね。茉莉花なりに自分たちが居なくなった後の事を考えての事で、悪気は無いんですよ」と大蔵に謝った。

「わかっております。拙者もついむきになってしまって、申し訳ござらん」と頭を下げた。

茉莉花の後押しをするわけじゃないけど、若様が特例を認めてくれるのであれば、これから先の事を考えるのにいい機会だと思うから、大蔵さんも考えてみてくださいね。お節介だけど、未来の私たちから見たら、武士だけが生きる道では無いと思うから」

「はい。それは拙者もそう思います。でも拙者は武士を捨てる事が出来るかわかりません」と大蔵は本音を吐いた。

「そうねぇ、そうかも知れないね。そう考えたら明治維新後の武士たちは大変だっただろうなぁ」

由佳は戸締りをしながらつぶやいた。

それを聞いた大蔵は「由佳どのは拙者が居た時代の事を良くご存知であると聞きました。出来れば詳しく聞かせてくれぬであろうか」と頼んできた。

「あら、横山さんや他の方に聞いていたかと思ったんですが」と大蔵の意外な申し出に驚いたが、

「彼らは詳しくは知らぬようで」と言われ、私もそんなに詳しくないけどと言いながら知っている限りの明治新時代の武士たちのその後を話して聞かせた。

 

当時江戸の武士たちは、幕府側についた多くの家臣は駿府に逃れ、又は水戸に幽閉された慶喜公を慕って水戸に移住した者もいたらしい。

しかし、引越しが出来る財力の無い御家人や旗本たちはそのまま江戸に残り、同心たちはそのまま新政府が新設し募集した邏卒という警察の前身の職についたり、算盤や帳簿付けに明るいものたちは新政府の職員になったり、学校の講師になったりしたことを話した。

とはいえそれも一部の者達で、多くの武士は町人同様に人足をしたり、世を儚んで自害した者も居たらしい事を話した。

 

大蔵は暫し考えていたが、「戦国より続いた武士の世も跡形も無く消えてしまったのであろうか」と聞いて来た。

由佳は少し申し訳ない様な気がしたが、「はい」とうなずいた。

「そうか」と言った大蔵は由佳に向き直り、心なしかさっぱりしたような顔で、

「教えていただきかたじけない。時滑りの面々の様子を見て判ってはいたつもりでしたが、心の何処かで未来の世でも武士が国を支え、守っていると信じておりました。しかし由佳どのの話を聞いて迷いはなくなりました」と言った。

由佳は茉莉花の話を鵜呑みにしたわけではないが、大蔵の今後の気持ちを聞きたいと思ったが、

それは余計なお世話だと思い直し、「それは良かったです」とだけ返事をした。

 

 「時の会」はいつものように各自の近況報告から始まった。

特に皆変わったことも無く報告はすぐに終わった。

そのまま新年会に移行するかとおもいきや、丸山が最後に報告があると居住まいを正した。

皆の顔を見回しながら丸山はいつに無く真剣な顔で、

「山本殿が再滑りなさったようです」と静かに報告した。

「え、本当に」

「それはいつですか」と口々に言いかけた皆を制して、懐から手紙を取り出し、読みながら説明した。

「渋谷の報告によりますと、十二日午後、日和田山、女岩にて渋谷が見守る前で岩に登り、落雷と同時に再滑りしたようです。日和田山の女岩とは今年の初め、辰五郎と一緒に万が一の為の仕掛けを作った場所で、渋谷によると翌日も数人で岩の上から隈なく探したが山本殿は見つからず、その報告を受け、若様は再滑りしたものと判断されました」

暫く皆無言だった。

「無事元の場所に戻れたのかな」と安田がポツリとつぶやいた。

丸山は「そればかりはわかりかねますので祈るしかありません」といつかの若様と同様の言葉を誰にとなく漏らした。

「きっと大丈夫だよ、きっと元の場所に戻っているよ。そう願って皆で乾杯しようよ」茉莉花が安田を励ました。

「そうだね。きっと山本さんなら大丈夫だね」安田は笑顔で答え、支度をしに立ち上がった。

 

それからは新年会を兼ねた飲み会となった。

由佳は丸山に今後の事を相談したいと思い徳利を持って丸山の隣に座った。

「色々ご苦労様でした」と言いつつ徳利を差し出し酌をしながら切り出した。

「今回の山本さんの件で、益々私たちが再滑りする可能性が高まりました。それで、ご相談なのですけど、お店の今後は辰五郎さんとおつたさんに任せるとして、文太の事です」

由佳は辰五郎がいずれ養子にして細作の仕込みをするかも知れないということを丸山が知っているかどうかわからずその先は言えずにいたが、丸山の方から

「辰五郎が養子にするという話ですね」と振られ首肯した。

丸山は少し声を潜めると、文太の事は辰五郎の思い通りに進めて良いとお許しが出ているので今後の成長を見守りつつ判断すると教えてくれた。

そんな話をしていると、

「あれ、丸山さん、ちゃんと飲んでますか」と安田がやって来た。

「何の話をしてたんですか」と聞かれた由佳は咄嗟に

「そろそろ梅の季節なのでどこか良い梅の名所は無いか聞いていたんですよ」とうそをついた。

辰五郎の事は特別秘密という訳では無かったが、何となく黙っていたほうが良いような気がしたのだ。

丸山も「この辺りでは湯島天神が有名ですが、ちょっと遠いので、目黒不動尊辺りでも梅見が出来るのではとお教えしていたんですよ」と合わせた。

「梅見かー、それいいね、目黒不動なら近いし縁日も盛んだし茶屋も沢山あるから楽しいよきっと。それでいつにする」とすぐに乗って来た。

「私も梅見は行った事が無いので詳しくないのですが、梅の見ごろは結構長く、これから一月くらいでしょうか」と丸山が答えた。

「じゃあ来月の時の会じゃ遅いかな、でも縁日の日だと人も多いだろうし、横山さんがきっと詳しいだろうから聞いてくる」とすっかり乗り気で戻っていった。

「なんだか気ぜわしいお人ですね」と丸山は肩をすくめて笑った。

安田はすぐに戻ってきて、

「ねぇ、横山さんに聞いたら二十八日が毎月縁日だって、でもすごい人出だからその日以外が良いかも知れないってよ」と教えてくれた。

「私はせっかくなので店の皆と行きたいと思っていますので、ちょっと考えさせてください」と由佳は勇み足の安田に罪悪感を感じならが答えた。

「了解です、決めたら教えてくださいね、俺も行きたいですから、大蔵さんも誘ってね。おいてけぼりにしないでくださいよ」そういうと又大蔵たちの席に戻っていった。

「本当に行くことになりそうですね」と由佳はため息をついた。

「まぁいいじゃないですか、たまにはのんびりする日があっても。きっと良い思いでになりますよ」と丸山に言われ

「それもそうか」と由佳は笑顔を返し、戻ったら辰五郎に相談してみようと思った。

 

時の会が終わり店に戻ると、皆はすでに夕飯を済ませ、店でお茶を飲んでいた。

今日は文太も店で夕飯を取った様で、四人で卓を囲んでいる姿は、まるで本当の親子のようだった。

「おや、お早いお帰りですね」と辰五郎が席を空けてくれ、おつたがお茶を入れてくれた。

由佳は熱いお茶を一口すすると、「辰さん、山本さんの件は聞いた」と聞いた。

辰五郎は軽くうなずくと「その件は改めてお話します」とだけ答えた。

由佳もうなずきを返すと、

「そうそう、今日話しに出たんだけど、ちょうど梅の季節だし、梅見にでも行かないかってなってね、辰さんどこか良い場所知らないかな」と話を変えた。

「梅見ですかい、それならやっぱり湯島天神がこの辺りでは一番でしょうね」

「江戸では梅見をするんですか、在所辺りでは梅なんて実を採るのに沢山植わっていてわざわざ見に行かないですよ」とおつたが驚いて言った。

「そうさね、江戸じゃぁ梅見に桜、菖蒲に紅葉や月見と季節ごとにあちこちに押しかけるのが最近の流行だからね」と辰五郎が苦笑しながら、

「まぁ大抵は花を見るより飲んで浮かれている輩の方が多いんだが」と付け加えた。

「梅見なんてしゃれているけど、おいらもわざわざ行った事がないや、白金辺りじゃどの寺にも神社にも梅は咲いているし、湯島までいかなくてもそれでいいじゃねぇの」と興味なさそうだ。

「文太、湯島の梅はちょいとちがうんだぜ」とそんな文太に辰五郎が講釈を始めた。

湯島天神雄略天皇二年、雄略天皇の勅命により天之手力雄命(あめのたぢからをのみこと)を祀る神社として創建されたと伝えられている。

南北朝時代の正平十年(一三五五年)、住民の請願により菅原道真を勧請して合祀した。

徳川家康江戸城に入ってから徳川家の崇敬を受け多くの学者・文人が訪れた事から学問に霊験あらたかと信仰され、菅原道真に由来し梅の木が多く植えられた。

「だからよ、文太も読み書きが上達するように、道真公にしっかりお参りするがいいぜ」とすでに父親の顔をして言った。

「へー本当にご利益があるのかい、茉莉花はどう思う」と聞かれて茉莉花は、

「私はねちゃんと福岡の大宰府天満宮にお参りしたんだよ」とちょっと自慢げに言った。

「そりゃすげぇや、大宰府が本宮ですからね、だからお嬢さんはたいそう読み書きが出来るんですね」

「へーやっぱりご利益あるんだな。おれも茉莉花みたいに難しい字も読めるようになりたいや」と二人におだてられ

「まぁね」と茉莉花は苦笑した。

「梅見の季節は茶屋や出店も沢山出て賑やかでしょうね」とおふきはちょっと目を輝かせた。

「そういや、湯島天神じゃぁうそかえって慣わしがあって、催しがあるときは鷽の笛が大層売れるって話ですぜ」と辰五郎が付け足した。

「うそかえって何」と茉莉花が聞いた。

「へぇ、何でも買った鷽って鳥の人形を交換すると前の年にあった厄が嘘になるって事で、本当なら初天神の日に神社から授与して貰う人形が正式なんですがね、最近じゃ子ども向けに笛にしたのを出店で売ってまして、これが人気だそうで」

「鳥を取り替えって、だじゃれだね」と茉莉花は笑った。

そういえばここに来て気がついたが、江戸の人はだじゃれや言葉遊びが好きなようだ。

神事までしゃれなのかと由佳は改めて驚いた。

 

「でも折角だから神社の人形の方がいいよね。じゃぁやっぱり湯島天神まで行く」と説明を聞いた茉莉花は由佳に問うた。

「そうね、折角だから湯島天神にしましょうか。でもそうするとお店はお休みにしないとだね」

「たまには良いじゃん、お店休んで皆で出かけようよ」と懇願され由佳は「そうね」と笑って承諾した。

「じゃ、家が六人で大蔵さんと安田さんで八人だね。丸山さんも行くかな、辰っあん聞いてみて。で、いつにする」

「確か湯島は初天神の時にしか人形を売らないんで、二十五日ですね。でも朝早くに行かないと人形が買えませんよ、湯島までは一刻はかかりますからねここを出るのは六つですかね」

「ひゃー」と茉莉花はおどけて目を回したが行かない訳ではなさそうだ。

結局、嘘から出て真になった梅見は鷽替えまで話が行き、なんだか符丁が合うなと由佳は思った。